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フィリピンと英語ーなぜフィリピン人のビジネス英語は高く評価されるのか

7000以上の島から構成されるフィリピン共和国は、8つの主要言語を含めた100以上の言語をもつ多言語社会です。国語はピリピノ語で、英語とピリピノ語の2つが公用語として定められています。

 

ところで、ビジネスにおける英語力を示す指標に “BEI”「ビジネス英語指標」があります。様々な職場の労働者を対象にしたビジネス英語を測る調査です。

2012年に行われたGlobal EnglishのBEIレベル調査で、アメリカに次いで2位という結果を残したフィリピン。なぜこのような結果を出すことができたのでしょうか。

 

フィリピンと英語の関係を語る上で、切り離せないのが歴史です。約400年に渡ってスペイン統治下にあったフィリピンは、米西戦争によってアメリカに割譲されます。その後日本軍の占領などを経て第二次世界大戦後に独立を果たすのです。

スペイン時代の教育の一番の特徴は、複線型の教育制度である。スペイン語を教授 用語とし高等教育まで完備されたスペイン人用の学校制度に対し、フィリピン人には キリスト教の布教活動を目的とした初等教育のみが与えられ、教授用語もその地域の 母語に限られていた。

1898年に米西戦争によってフィリピンの宗主国となったアメリカは、教育の効果を 十二分に認識しており、積極的な教育活動を行った。すなわち、全国に公立小学校を建設し、英語を教授用語とし、教師も教材もすべてアメリカが提供するという「アメリカ式教育」がフィリピン全土で行われた。

 

一方母語は教室内での使用が禁止され、英語が唯一の教授用語とされた。こうしたアメリカの積極的な教育政策によって、就学率は飛躍的に増加し、英語もフィリピン国内の「共通語」として普及した。 

このような歴史を経て、英語公用語化が進んでいったのです。

 

さて、英語教育が発展していく条件として、ETS社の最高執行責任者デイヴィッド・ハント氏は4つの条件を上げています。

 

1.英語教育を早期から行っている。
2.英語指導の質が良い。
3.英語を使用する実践の場がある。
4.英語を身につけることによるインセンティブがある。

                         ベネッセ教育総合研究所より引用

この4つの点から、フィリピンにおける英語教育について考えていきましょう。

 

英語教育を早期から行っている

フィリピンでは英語教育が小学校から始まりますし、私立校では英語に力を入れていることを特色としている学校も多く存在します。加えて、基本的に国語以外の教科は英語で授業が行われています。

 

フィリピン教育省の2010年度の資料によると、公立学校における6年間の英語の総授業時間数は1,746時間。日本の小学校における「外国語活動」が5・6年生の2年で各35単位(35×45分、26時間)であることと比べると、その差は歴然です。

 

英語指導の質が良い

次に、英語教育の内容について考えてみます。日本の小学校の英語教育が「英語に慣れよう・親しもう」という前提のもとに成り立っているのに対し、フィリピンでは社会生活で不可欠となる書類の記入などを行ったりと実用的です。

 

また、英語の授業で用いられる教材も道徳的な内容であったりと、英語そのものを学ぶというよりも「英語を用いて何かを行う」といった内容なのです。こういった授業であれば英語の運搬能力が高まりますよね。ビジネス英語指標の「BEI」で高評価を得るのも頷けます。

 

英語を使用する実践の場がある

フィリピンにおいて、英語を使用する実践の場はたくさんあります。学校の授業は基本的に英語ですから、毎日英語を聞き話す事ができます。映画は基本的に字幕なしの英語です。英語ができなければ享受できる情報・娯楽ががくんと減ってしまうのです。このような環境は、英語使用に最適な環境と言えるでしょう。

 

英語を身につけることによるインセンティブがある

英語を身に着けていれば、英語講師や外資系企業、コールセンター勤務などの比較的賃金の高い安定した仕事を得ることができますし、持ち前の英語力を活かして海外で働くことができます。Overseas Filippino Workers(OFW)、すなわち海外出稼ぎ労働者たちからの海外送金がGDPの1割以上を占めているのだとか。高い英語力があれば、その分得るものも大きいのです。

 

フィリピンにおける英語以外の言語 ーリンガ・フランカ政策

先程も述べたように、フィリピンでは様々な言語が使用されています。学校教育においては英語とフィリピノ語の両方が用いられており、国語であるフィリピノ語も「フィリピン人としての威厳を保つための国語」として定められています。

 

フィリピンでは1999年から、地方語を教授言語とするリンガ・フランカ教育政策が試行され、2003年に英語教育強化に係る大統領令が発布されるまで続きました。

 

この政策によってフィリピノ語と英語に限定されていた教授用語が、セブアノ語とイロカノ語(タガログ語、セブアノ語に次いでフィリピン第3位の話者数を持つ言語)となった。英語による教育だけでは、英語能力が高くない子供がついていけなくなってしまうため、この3語を用いて教育水準の向上を図ったのです。

家庭環境や地域によって子どもの英語水準には明らかな差があり、英語による教育が彼らにとって大きな壁となっているのも事実のようです。セブ島で暮らす人々は家族や友人と話す際にはビサヤ語を使用しているとのこと。

 

とはいえ英語はどんどんと勢力を増しており、フィリピン固有の様々言語は話者減少という問題を抱えているのが現実です。フィリピンの言語を守ろうと、NPO団体「SOLFED(Save Our Languages Through Foundation, Inc.)」などが活動しています。

 

フィリピンのビジネス英語能力の高さは高く評価されています。ですがたくさんの言語と文化を持つフィリピンでは、英語における教育を推進することによる弊害もまた見受けられます。

 

とはいえ、フィリピンの英語教育、使用状況は日本にとって良い見本となるものです。ビジネスにおける必須教養となった英語。フィリピンの英語教育には、学ぶべき点がたくさんあるのかもしれません。

 

参考

フィリピンの言語政策研究の課題 

フィリピンの小学生の英語への取組

フィリピンにおける英語使用の現状ー英語の国際化の流れを踏まえてー

国家による言語政策と地方語の対応 ― フィリピン、セブアノ語の事例より

フィリピンの教授用語政策 ―多言語国家における効果的な教授用語に関する一考察―

 

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執筆者

福澤美菜恵

福澤美菜恵

外国語学習中(モスクワでロシア語、セブで英語)の大学生。大学を休学しフィリピン・セブのサウスピークでインターン中。ライティング修行中です。@MazdaYUSAKU