英語学習者は認知症になりにくい?!

ベルギーのゲント大学の研究チームがとある調査結果を発表しました。それは「バイリンガルの人はアルツハイマー型認知症の発症を約4年遅らせる可能性がある」という内容でした。

 

バイリンガルとは二言語を話せる人のこと。ゲント大学の調査結果は、生まれながらにバイリンガル環境だった人だけでなく、大人になってから第二言語を習得した人も含めていました。

つまり英語を第二言語として習得すれば、認知症予防に役立つと言えるのかもしれません。第二言語習得が、認知症予防にどのようにして良い効果を与えているのでしょうか?

 

結論から言えば、第二言語を習得すると、認知症の発症の原因となる”認知処理能力の低下”を防ぐ可能性があります。それどころか、認知処理能力の向上まで期待できるんですね。

 

”コトバの切り替え”がキーワード。認知処理能力を上げるために

 

実のところバイリンガルは、語彙アクセスの方法がモノリンガルとは違います。

※モノリンガル……言語を一つのみ習得しているひと。

 

例えば、上記のような写真を見たとします。日本語のモノリンガルであれば日本語で「海」と答えるでしょう。バイリンガルの場合、日本語の「海」に加えて、英語の「Sea」という語彙も思い浮かびます。

 

バイリンガルは会話の中で語彙を思い出すとき、モノリンガルと比べ時間がかかります。これは上記の例のように、二言語における競合が頭の中で起こっているからなのです。バイリンガルは会話で使われている言語に合わせて、自らが使用する言語を選択します。

 

 

例えば友達と海に来ました。綺麗な海を見て、思わず言葉が出てしまう。そのようなとき、日本人の友達と来ていれば「なんて綺麗な海なんだ…」と言ってしまうでしょう。一方で、外国人の友達と遊びにきたならどうか。おそらく「What a beautiful sea…」と英語で表現するでしょう。

 

これを”コトバの切り替え”といいます。”コトバの切り替え”では、競合するものの片方の言語を抑制しなければいけません。

 

抑制は認知処理能力の一つ。第二言語を習得すると、無意識レベルで抑制を繰り返し行います。そのため認知処理能力の向上につながり、認知症にもなりにくくなると言えます。

 

バイリンガルの赤ちゃんから分かった「英語かどうか聞き分けるだけでも認知症予防に」

 

バイリンガルは”コトバの切り替え”によって、認知処理の一つである抑制を繰り返します。その結果、認知処理能力を上げることにつながると述べました。実は言語を話すだけではなく、聞くことでも認知処理能力の向上が促されると言われています。

 

7ヶ月間、二言語を聞いて育った乳児(バイリンガル)。同じくモノリンガルの乳児を対象に、認知レベルを見る実験が行われました。驚くことに、言語を話す前から、バイリガル環境で育つ乳児のほうが認知処理能力が高かったのです。

 

バイリンガルの乳児は、両言語をひっきりなしに聞く環境でした。その間、各言語の単語をきちんと分類します。つまり英語か日本語かを聞き分けるだけでも、認知的負荷は存在するのです。そして聞き分けが認知処理能力の向上に貢献します。

 

また「Late」と「冷凍」のように、意味のレベルでは全く関連していない単語同士も同様です。発音同士が似ていることで、バイリンガルは競合状態を引き起こします。

 

まとめ

 

第二言語を習得すると、認知症の発症の原因となる”認知処理能力の低下”を防ぐことが可能。それは両言語を使い分ける中で行う無意識レベルの情報処理が起因します。

 

日本人にとって、英語を第二言語として習得することは情報処理の負荷が大きいと言われています。というのも習得する言語間の文法的違いが大きいほど、母語を使って処理するのが難しいからです。

 

これは英語とスペイン語のように、文法構造が似た言語同士のバイリンガルよりも、構造が違う英語と中国語のバイリンガルのほうが、認知課題の成績が高いことから明らかになりました。

このことからも、英語を勉強することは認知処理能力を高められると言えます。上記のように、聞くだけでも無意識に抑制しています。そのためリスニング学習をすれば認知症予防になると思えば、英語学習も捗るのではないのでしょうか。

 

【参考文献】

・久津木 文(2016)バイリンガルとして育つということ—二言語で生きることで 起きる認知的影響—

 

・白井 恭弘(2008)外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

 

・矢部 武(2016)バイリンガルの高齢者は認知症になりにくい!
http://www.nikkeibp.co.jp/atclgdn/gdn/15/308316/2016102501/?P=1