「英語が話せるようになるには、話す機会を多く確保するのが近道」と思っている方、多いでしょう。

実は、それって遠回りなのです。イソップ童話の「ウサギとカメ」のように、単語や文法など、基礎知識を地道に固めたほうが良いのです。そのほうが早く英語が話せるようになります。

というのも英語を運用する4技能のうち、最も難しいのはスピーキング。高度な能力を要する作業を行うときは、その作業に必要な能力を段落にわけて覚えましょう。これをスモールステップ法(シェイピング法)といいます。

※英語運用に必要な4技能……リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの4つ。

急がば回れ。1つずつ丁寧に進めるスモールステップ法

スピーキング能力を向上させる、効率的な英語学習はどのようなものでしょうか? スモールステップ法に当てはめて考えてみます。

すると、まず始めにすべきことは単語や文法。そういった基礎知識をインプットすることこそ、英語を話すための近道であるのです。

この理論をより理解するために、「オペラント条件付け」という反応実験を紹介します。

「オペラント条件付け」では、イヌを、テレビ画面とボタンが置いてある部屋に連れて行きます。

目標ははイヌがエサを手に入れること。しかしタダではもらえません。テレビ画面に「丸い図形」が点灯したときに限り、イヌがボタンを押すとエサがもらえます。この実験は、

・図形が点灯したらボタンを押す

・ボタンを押せばエサが出る

という2つの手順を学習する必要があります。イヌの生活では、複雑な作業を行うことがないので、2つの手順を踏むこの実験は難しかったようです。この条件下では、イヌはエサにありつくまで、何百回も挑戦することになりました。

次に、少し変更を加え再実験しました。

初めに、点灯に関係無くボタンを押しさえすれば、エサが出てくるように設定します。「ボタンを押せばエサが出る」という関係を学習させます。

そして前と同じ条件に戻しました。画面に円が出たときだけエサが出てくる設定です。つまり再実験の際は、1つの作業達成するのに、2つの手順を踏むようにしました。

こうすることで「図形が点灯するときだけエサが出る。そこでボタンを押せばよい」ことをイヌは認識することができたのです。なんと、このように2つの段階に分けただけでも、イヌの学習は10倍の成果が得られました。

単語と文法という基礎知識のインプットが重要

前置きが長くなりました。実は英語学習も同じです。スピーキング能力を向上させるための手順を分けると、基礎知識をインプットして土台を固めることから始まります。

日本人英語学習者は、「英語がペラペラになりたい! ペラペラになりたい!」と口を揃えておっしゃいます。そのために聞き流し教材を使ったり、英会話学校に通われたりされる方も多いです。しかしそれは、英語を話すための適切な手順を踏んでいてるとは言えません。

参考:「聞くだけで英語が身につく」ってホント!?科学的に見たその効果とは(SLA)

いきなり英会話や難しい英文を読むのではなく、「英単語」や「文法」 など基礎知識のインプットを増やしましょう。英語を話すとは「手に持った英語参考書の英文を見ることなく、読み上げたもの」です。英文を見て、単語や文法に疑問が残っている時点では、スピーキング能力を上げるのは夢の話です。

次に、リスニング能力を向上させてください。英会話は話すだけではなく、聞き取ることも必要です。またリスニングは、インプットした基礎知識の定着を早める効果もあります(音韻ループによる音の記憶への保存)。

そして英文を書けるようにしましょう。英作文できない文章は、英会話で使いこなすことができない表現です。言ってみれば、有り余る時間の中で英文を作るのが英作文。頭の中で瞬時に英文を作るのが英会話と言えます。

このようにして理解可能な範囲を広げてから英会話に挑むほうが、英会話だけに特化するより効率が良いのです。

「ウサギとカメ」のカメのようにコツコツとインプット

・大きな目的達成のために、小さな目的を達成し続けて徐々に大きな目的達成を目指す方法をスモールステップ法という。

・スピーキング能力を向上させたいなら、まずは単語や文法など基礎知識のインプット。

早く英語を話せるようになりたい気持ちはあるでしょう。しかし英会話に取り組むのは決して効果的な学習方法ではありません。上記で述べた通り、基礎知識のインプットを始めましょう。地味ですし、決して楽しくないですが、「ウサギとカメ」のカメのようにコツコツしたものが最終的にはうまくいくのです。

【参考文献】

『受験脳の作り方 脳科学で考える効率的学習方法』池谷裕二(2011)新潮社

『心理学』鹿取広人、杉本敏夫(2015)東京大学出版会、

『基礎から学ぶ認知心理学』服部雅史、小島治幸、北神慎司(2015)有斐閣