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フィリピンのローカルな酒・トゥバ(Tuba)の話


「ジャパニーズ! これが、俺の家で作ったトゥバ(Tuba)だ、飲んでみろ!」

はじめまして。サウスピーク卒業生の鈴木 龍といいます。私は、2016年の1年間、大学を休学し、4月から7月まではセブ島で留学生活を送っていました。留学前に500点台だったTOEICのスコアは、3か月で830まで上がり、サウスピーク・レジェンドにも選んでいただくことができました。留学の経験は、その後の就職活動に大いに役立ちました。

突然ですが、皆さんには人生の目標があるでしょうか?

私の人生の目標は、世界中のローカルな酒を制覇して、いろいろな人にそれを紹介することです!

 

この世界には、さまざまな酒が存在する……
生きている間に、それらを飲み尽くす事は出来るだろうか……
酒を知ることは、歴史を知ることでもある……

 

例えば、皆さんが愛飲しているであろうビールはどうだろう?

ビールは世界で最も古い種類の酒のひとつだ。既に紀元前5000年頃のメソポタミアではビールがつくられていた記録があるという。エジプトで、ピラミッド建設の労働者には、毎晩ビールが振る舞われていたという話もある。

重要なのは、いつどこで、誰が作り始めたか定かではない種類の酒が、私たちの知らない種類の酒が、まだ世界中に数多く存在しているということだ。私はそんな酒を探して、またしても旅に出るのである…

前置きが長くなりすぎましたが…私がフィリピンに渡ってきたのは、英語を学ぶためだけではありませんでした。私は大学で人類学を専攻しており、さまざまな国に固有の文化に対して非常に興味があります。特に酒は、それを作る人間のほかに、その地に特有の気候・土壌・微生物が連関してつくられています。酒は、場所ごとにそれぞれ異なる特徴を体現していると言っても過言ではありません。

そしてセブ島にも、固有の酒がありました! 留学中にフィリピン人講師から、「セブ島にも、ここでしか作られていない酒があるよ」と聞いていた私は、いてもたってもいられず、留学を終えた後もフィリピンを訪れ、実際にとある村へ行き、その酒がつくられ、消費されるまでの一部始終を調べました。そしてそれをテーマに卒業論文を書いてしまうほど、ローカルな酒にのめり込んでいくというわけです。

結論を書くと、とにかく酒が好きなのです。

今回は、留学している最中はあまり見かけることのないであろう、セブ島ローカルの酒・トゥバ(Tuba)について、ご紹介したいと思います。

注意:トゥバに限らず、ローカルな飲み物に挑戦する際は、つくられる過程がわかっているものがいいです。特に、誰によって、どのようにつくられたかわからない酒には、最悪の場合、清潔でない水やメチルアルコールなどが混入している可能性があります。十分注意してください。

中部ビサヤ地方のローカルな酒・トゥバ(Tuba)とは?

トゥバの原料となる、ココナッツの樹液を採取しているところ。樹液を集めて1日放置するだけで、アルコール発酵がなされて酒ができてしまう

トゥバは、フィリピン・中部ビサヤ地方(セブ島とその周辺の島々)で伝統的につくられている、ココナッツの樹液を原料としてつくられているお酒のことです。通常、酒をつくるためには、糖分を含んだ原料をしばらくの間発酵させなければなりませんが(微生物のはたらきで、糖がアルコールに変化する)、何とトゥバの場合、樹液を竹の筒に入れ、1日放置しておくだけで酒になります。採取直後の樹液は甘いのですが、3日も経てば甘味はすっかり消え、完全にアルコール発酵しています。なんと早い!

逆に、酒になるのが早く、すぐに悪くなってしまうのがトゥバの特徴でもあります。セブ市内の都市部ともなると、トゥバを見かけることはできません。卒業論文の調査でセブ市を歩き回ったのですが、唯一、セブ市のダウンタウンにあるカルボン・マーケットで、トゥバを煮詰めて、保存がきくようにして売られているのを見かけただけです。

(もっとも、留学中は、日曜に学校を抜け出し、仲間と一緒に農園や闘鶏場に行ったこともあるのですが、安全上カルボン・マーケットは校則で行くことを禁じられていたので、実際に行けたのはずっと後のことでした)

酒を飲んだら留年しかける

カルボン・マーケットでは、トゥバを煮て加工した酒・バハリナ(Bahalina)が売られている。トゥバと違ってドロドロした液体で、コーラで割って飲む。1杯150mlで、15ペソ(40円)。マーケットの住人にも英語で突撃インタビュー

トゥバはスーパーマーケットでは売られておらず、トゥバを飲むためには地方部へ行かなければなりません。それどころか、セブ市のツーリスト・オフィスを訪れた際、セブ市職員に、

“Modern people don’t drink Tuba. ”

とまで言われてしまう始末。セブ市民は、毎年1月のフィアスタ(盛大なお祭りイベント)の時にしかトゥバを飲まず、この時期には市内で流通しないとのことでした。このままでは酒をつくる過程を見ることが出来ず、卒業論文が書けません。酒を調べに来て、酒を飲みまくっていたのはいいのですが、そこから一転、留年の危機に陥ってしまいました…!

そこで私は一計を案じました。私の大学の先輩にしてサウスピークCEO、そして現地フィリピン社会で絶大な力を持っている(?)丸山要平さんに相談し、丸山さんがサウスピークを設立する前に滞在していたセブ島南部の村を紹介してもらい、実際にトゥバがつくられ、人々の間で消費される過程を調べることにしました。

村で飲むトゥバの味は

暑いので、扉をあけっぱなしで走るバス。セブ市外へ出ると、青い海が広がっている

セブ市からバスで走ることおよそ5時間、セブ島南部にMalabuyocという人口1万人程度の自治体があり、そこからバイクに乗り換えて山道を走ると、Lomboという名前の集落があります。

森をかき分けて山道を上がっていく

私は、この村を2度訪れました。1度目はサウスピークの日本人スタッフの皆さんとともに、そして2度目は、9月の村の祭りの時期にトゥバが大量に消費されるというので、その様子を記述するために行きました。

まずは皆で、できたばかりのトゥバで乾杯。

味のほうは……スタッフの皆さんは、トゥバを飲むのは初めてだったようで、「ドリアンのような癖のある風味」「思ったより甘い」「この色からこの味は想像していなかった」といった感想。セブ島でしか飲めない酒であったことは間違いありません。

もともと、ココナッツの木の樹液には色がないのですが、樹液を採取する時に、竹の筒にマングローブの樹皮を粉末にしたものを少し入れておきます。このマングローブの粉が、独特のオレンジ色と風味を出すのです。

実際に研究者がトゥバの成分と発酵を行う微生物を調べた際、マングローブの粉末を入れたものと入れない物を比較し・機器で分析したところ、粉末を入れていないものには、カンジダ菌などの雑菌が入ってしまうのに対して、粉末を入れたものはそれらの雑菌の繁殖が抑制されることが明らかになっています[i]。トゥバを作る人々は、マングローブの粉末を入れることで、トゥバの質が上がることを経験的に知っているのです。

村の人々は、トゥバを自分たちの所有するココナッツの木で作り、家で飲んでいます。樹液を採取する木ではココナッツの実が収穫できないのですが、それでも酒がつくれるとなると、「酒づくり」用の木が何本か確保されています。余った分は村の商店へ持って行って、ビールよりもずっと安い値段で販売するとのこと。

そして彼らは、村の祭りのときになると、自分の家でつくったトゥバを持ち寄って、みんなで飲みます。さらに、彼らは酒を飲みながら闘鶏に興じます。

闘鶏の前に置かれたトゥバのタンク。ちなみに、鶏を戦わせて、負けたほうは食料になります

酒が入ると、闘鶏も熱を帯びてきます。酒は人と人をつなぐツールでもあり、その土地を体現するものの一つでもあります。

日本では、酒を許可なく自分の家でつくることや、闘鶏行為は禁止されており、見ることができません。日本ではもうみられない光景に、どこかしらノスタルジーのようなものも感じられました。

午後7時のカルボン・マーケット。みんなでトゥバなどを持ち込み、飲みながらカラオケを歌う。歌われるのは、多くがアメリカの英語の歌

前にも書きましたが、トゥバはスーパーマーケットで売られることはありません。トゥバを、近代的な流通システムに乗せる仕組みは存在していません。カルボン・マーケットのようなローカルマーケットや、つくった人物の顔の見えるような地方部でしか、トゥバは見つけることができません。

インターネットを有効に使えばさまざまなものを知ることが出来る社会になりましたが、実際に海外へ行けば、普段絶対に見ることのできないものがまだまだあるということに気づくことになります。せっかく知らない環境に身を置くのであれば、そういったものを探してみるのも、また一興ではないでしょうか。

[i] Yamagata, Kei and Fujita, Tokio and Sanchez, Priscilla C. and Takahashi, Rihei

1980   “Yeast flora of palm wine in the Philippines” 近畿大学農学部紀要第13号, pp.59-66

本記事はサウスピークの卒業生である鈴木龍さんから寄稿をしていただき、サウスピークの北山が編集したものです。

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