『英語耳』を書いたキッカケと『発音学習』の未来。

(前回)前回のインタビューでは、松澤先生が英語学習に興味を持った機会、また英語を使って仕事をしたエンジニア時代の事を話していただきました。

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(松澤)ここから英語耳の話になります。

90年代が終わるころに自分でホームページを立ち上げました。タイトルは「英語・発音・語彙」とつけました。当時はホームページを立ち上げている人が少なくて、英語学習のためのサイトも珍しかったのでアクセス数も増えていき、検索にも出てくるようになりました。発音のサイトとしてはUDAさんのサイトのアクセスが多かったです。たまたま、加藤貞顕さんというアスキーの編集者が、自分も英語を勉強したいということでネットでいろいろ調べたなかで、僕にアプローチしてきたのが2003年です。『英語耳』は2004年に出版しました。

加藤さんから、本を出さないかというお誘いがあったので、何度かお会いしました。加藤さんは自分で英語を身につけたいという動機があったので、お会いするたびに発音をみてあげたりして少し厳しめに指導しました。本を作るまでの数か月です。彼は数か月でTOEICの点数が200点ぐらい上がりました。この本は編集者でもあり読者でおある加藤さんという厳しい目線から作られていったのです。

※加藤貞顕氏は「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」など数々のヒット書籍を手がけた編集者

(柴田)TOEICもその頃にでてきたのでしょうか。

(松澤)そうですね。TOEICも就職に有利だということもあって受験する人が増えていました。加藤さんが僕のサイトを見つけてくれて、『英語耳』を出版していただけたことは非常にラッキーでした。加藤さんはその数年後に「もしドラ」という大ベストセラーを出した人ですからね。

当時、アスキー社は編集と営業と一体になっていて、加藤さんは営業や宣伝部とも緊密な交流がありました。ですから、ものすごくいろいろやってもらいました。それから、加藤さんはネットではAmazonにも注目していました。たまたま、テレビで英語学習熱と本の話題を取り上げたときに、『英語耳』が一瞬ですが紹介されました。その結果だと思いますが、Amazonの英語部門の売り上げランキングでトップ10に入ってきました。だんだん、2位や1位になってきて、そのことも新聞広告に使い始めました。そして年間売上げ部数が英語部門で第1位になったのです。

(柴田)「英語耳」というネーミングは、どなたが決められたのですか。

(松澤)加藤さんですね。それも裏話があって、編集者会議でネーミングを決めるときに他の方々はもうちょっと中身がわかるような、もう少し長いタイトルにしたいと言っていたそうですが、加藤さんが「英語耳」にピンときたのでしょう。もう、本を作る次の作業の側から催促がきていて、その日にタイトルを決めないと発売時期が延びるというところまで揉めていたそうです。最終的に、著者に聞いてみたらどうか、という意見がでたらしいのです。僕は全然脈略を知らず、加藤さんから電話がかかってきて、いま、いろいろなタイトルを考えているんですけれども「英語耳」っていうのはどうですか、と聞かれました。ですから、加藤さんがつけてくれたのです。

(柴田)ネーミングがいいですね。Amazonで1位ですか。

(松澤)Amazonで1位と言っても当時はまだAmazonって何、という時代だったのです。今のAmazonでの年間売り上げ1位というのとは感覚が違っていたと思います。『英語耳』の新聞広告もシンプルで目を引くものでした。次の年も英語学習本ではAmazonで年間1位でした。そして3年連続でAmazonで1位になったのです。

(柴田)3年連続ですからね。

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(柴田)少しだけ話が戻りますけれども、ウェブサイトでわざわざ発音をまとめようとされました。他にも英文法などいろいろとありますよね。なぜ、宇田さんと数人しかいないというような状況で、敢えて、発音だったのですか。

(松澤)その前に会社で「流暢」という、しゃべる翻訳機に関わって開発・発売していました。「流暢」という機械は、例えば、海外旅行の索引があり、いろいろな挨拶文をユーザーが選んで機械に発音させるものでした。次には音声認識の機械も作っていて、それは英文を喋ると点数がでます。発音機器だったわけです。

(柴田)「流暢」には発音機器があったのですか。

(松澤)そうです。日本語の訛りがある発音では、音声認識を使っても点が上がっていかないですから。英語の発音方法を文章に書き始めました。自分で最初に立ち上げたサイト名は「英語・発音・語彙」です。英語学習のポイントは最初に発音、そして語彙を増やすことだと当時から思っていました。特に英語学習の早い時期に英語の発音を習得しておくと、その後の英語学習の効率が高くなります。発音は重要です。

(柴田)以前、お話もありましたが、いまもまだ中高で発音は教えていない、というか、教えられないと思うんですけれども、そこらへんはどうですかね。中高生にもおすすめですか。

『英語耳』の内容は結構スパルタ的です。発売から数年経って、なぜ、これが売れたのかということをアスキーでレビューしました。営業が、スパルタ的なのが信用してもらえたのではないか、と言っていました。ですから、大人向けなです。小学生・中学生にはもうちょっと違うアプローチが必要かなと思います。

『英語耳』の未来|Pepper君とのコラボ?

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(松澤)中学で英語の発音を習得していれば日本人の英語は世界に誇れるレベルになると考えています。日本人は勤勉ですからね。そのためには英語を流暢に使いこなしている先生が発音を教えることが近道ですが、授業時間の関係で、発音には手が回っていません。生徒の耳も良くなっているので、発音を真似したいと生徒が思う先生が少ないのも現状です。

(柴田)ほぼ、いないですね。凄く少ないと思います。

(松澤)数年前までは、学校の先生のなかに入っていって、先生がたの発音をうまくすれば、生徒もうまくなるからと思っていたんです。英語の授業中に、英語の先生はたくさん英語を発音していますから、その発音が生徒にうつっていきます。でも、いまはまったくその考え方をやめました。

発音の指導ができる英語の先生の数を増やすよりも、レベルが低くてもいいから、機械ですね。例えば英語学習の音声認識のアプリではイングリッシュ・セントラルなどがあります。良いのですがまだまだ面白くないと思います。NHKのテレビで松坂ヒロシ先生がやっていたようにPepperくんの音声認識に発音診断してもらうという方法が良いと思います。いま、アップルのiPhoneにもデフォルトで音声認識がついてきますよね。あのレベルでいいので、Pepperくんのようなマン・マシーン・インターフェースで生徒にやさしく、生徒が面白くできるようにしておけばいいと思います。Pepperくんみたいなものが聞いて、あなたの発音はこうだけれども、駄目よ、ここをこう直しなさい、言ってごらん、と言って、また言う、というようなものです。

(柴田)将来的には『英語耳』で学んで、それをアプリで実行というような感じですかね。

(松澤)そうですね。例えば、セブ島のフィリピン人の先生とPepperくんとがペアを組み、授業が終わってもPepperくんを置いていけば、生徒はいつでも好きな時に自分で練習できますね。それと並行して『英語耳』を使って英語の音を理解するというような。Pepperくんは生徒間で奪い合いになると思います。セブ島の学校に置いておいて、グループ分けします。何人かでやらせると夢中になってやるのです。それでも恥ずかしがる人は、別室でひとりでやらせます。

最初のうちは人間の先生が必要です。いくらPepperくんと練習しても英語の発音の習得は難しいのです。機械が聞き取れるようになるように、先生のサポートが必要です。発音のレベルが上がると一人で練習して、どんどん発音が上達するようになります。サウスピークには発音の指導に優れた先生方がいるので、ぜひ検討してみてください。

発音学習で大切なのは『繰り返す事』と『続ける事』

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(柴田)発音学習なり、発音動画なり、「英語耳」に関してこれは言っておきたい、などありましたら、お願いできますか。

(松澤)繰り返すことと、続けることです。1年、2年、3年と続けることがキーです。続けなさいと言ってもね。個人個人で、ご自分の仕事の谷間とか、気分が乗っているときに集中してやっておくと、人生いいことあるよ、というメッセージですかね。かなり高齢者の目線になりますけれども。必ずそれが活きてくる機会があります。特にこれだけインターネットや英語が世界中に普及していますから、共通言語ですよね。堅くお勉強と考えずに、スポーツ、トレーニングとして考えるということ、それから、堅く考える教材ではなく、楽しいものがあればいいと思います。僕の場合はそれが歌だったのですが、そのあとは映画で、いまは海外ドラマです。

(柴田)勉強ではないですよね。なんというか、英語自体は言葉ですから。勉強と考えている人は堅苦しいというか、無駄に大変な思いをしているのではないのかなと思います。

(松澤)そうですね。腹八分目でいいのです。文法的にこれが合っている、間違えている、など、100パーセントをいつも目指して、重箱の隅をつつくよりは、腹八分目で楽しいことをしましょう。

多読も勧めているんです。多読も、完璧でなくても、腹八分目でストーリーを追えればいいと思っています。それよりは、たくさん吸収する。忘れていってもいいのです。音読の練習も、一度覚える努力をすることが大切です。最初のうちは、選んだ題材の全部でなくてよいので、好きなところの英文を発音ごと覚えていただいて、暗唱できるところまで練習する。毎日、5分や10分やればいいのです。覚えて発音するということもかなり重要なのです。僕は歌で100曲やりましたよ。そこから先は好きなことをやってください。

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執筆者
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柴田 はるじぇー @HAL_J

セブ島にある語学学校サウスピークの英語学習アドバイザー。著書に「3ヶ月でTOEIC300点上げるフィリピン留学」「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」