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人工知能(AI) 技術トレンド

生産性向上を支援するAI 製造業への活用事例は?



日本の産業のうち、国内生産額の約
30パーセントを占めるのが製造業です。

ところが、ドイツやアメリカといった製造強国からはインダストリー
4.0に代表されるマスカスタマイゼーションの波や、中国など人件費の安い製造大国からの突き上げにより、日本の製造業は苦境に立たされています。

 

 

製造業の効率化に不可欠なAI。その一方で、日本ではほかの産業に比べてAIの導入が進んでいないといいます。そこでAIは製造業にどのように活用できるのかやその実例、AI導入に成功する秘訣について解説してゆきます。

参考記事:
製造業へのIoT導入事例5選!できることや課題も紹介します

AIが製造業に活用される背景

高性能を発揮するディープラーニング

AIの代表格とも呼ぶべきディープラーニング(深層学習)。

注目され始めたのが、
2012年に実施された画像認識コンテストの「ILSVRC」です。画像認識や音声認識などパターン認識に強みを発揮すると考えられていたディープラーニングが、囲碁や将棋などにおける指し手(意思決定)で人間を凌駕するパフォーマンスを発揮。幅広い分野への活用が期待されたため、ビジネスなどで爆発的な広がりをみせました。

参考記事:
AIと機械学習の関係は?ディープラーニング(深層学習)との違いも解説!

インダストリー4.0AI

その一方で見逃せないのが、製造業における流れです。2014年にドイツで提唱された「インダストリー4.0」は、多品種少量生産しかできなかったカスタム製品の大量製品(マスカスタマイゼーション)の実現を目指しています。

マスカスタマイゼーションに欠かせないのが、IoTAIです。工場内設備にセンサーを設置し、データを収集。さらにはAIにデータを学習させることにより、製造プロセスを効率化し、生産性が高められます。AIが製造業に活用される背景には、インダストリー4.0(産業のIoT化)など、次々と新しい技術が登場したからに他なりません。

参考記事:
インダストリー4.0とは何か?わかりやすく解説

労働者不足も要因

また別の流れとして、少子高齢化による労働者不足の低下が挙げられます。厚生労働省の調査によると、製造業における就業者数は減少の一途をたどっています。とりわけブルーカラーと呼ばれる賃金労働者は、その仕事の過酷さから就業を避ける傾向にあります。人材に頼らないモノづくりを実現するためには、自律的に動作するAIやロボットが不可欠なのです。

AIをどのように活用できるのか

3AIブームの流れでビジネスシーンでのAIの利活用が模索され始め、実証実験が数多く実施されています。その結果、AIがどんなシーンで活用可能か、その輪郭が見え始めてきました。三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、製造業におけるAIの活用目的は3つに大別されます。

生産工程の向上

モノづくりに不可欠なのは、製品を製造するための生産システムです。

大量生産を実行するためには、生産システムの効率化や自動化が欠かせません。加えてインダストリー
4.0の流れで、マスカスタマイゼーションをいかに実現するかが検討されています。

生産システムの効率化や自動化に不可欠なAI。たとえば、産業用ロボットの制御にAIを活用することで、人件費の削除や作業の自動化など、生産性の向上が期待できます。

品質・サービスの向上

モノづくりには、生産性の向上のほかに、製品の品質を高める目的もあります。

中国を代表とする新興国の製造業に対抗するためには、品質の高い製品を効率よく生産する必要があります。部品や材料検査などに
AIの活用が期待できます。カメラやセンサーなどで撮影、そのデータをもとにAIが不良品を検出することも可能です。またインダストリー4.0との関連で述べると、熟練工の技術をデジタル化、そのデータをAIで処理することで、多種多様な生産にも対応可能になります。

新しい価値創造

モノづくりにおいて重要なのは、イノベーションです。高名な経営学者であるクレイトン・クリステンセンは『イノベーションのジレンマ』のなかで、破壊的イノベーション、つまり既製品の価値を低下させるような付加価値の高い新規製品の創出こそが重要だと主張しました。破壊的イノベーションの代表例はiPhoneでしょう。iPhoneは既存のフィーチャーフォンを市場から追い出しました。

 

iPhoneの製造は、iPhoneのデザインの作成、構成される半導体部品の製造、そして半導体部品の組み立ての3つに大別されます。Appleが本社を構えるアメリカがiPhoneのデザインに関わり、1台当たりの報酬は約8割と群を抜いています。つまり、付加価値の創造こそがもっとも高い生産性を有するのです。

 

AIもまた付加価値の創造に役立ちます。研究開発や材料設計などの意思決定にAIが活用できます。たとえば、IBMの開発したAIシステム「Watson」は意思決定を支援可能で、経営などの意思決定にも応用されています。

AIの活用事例

協働ロボット(ファナック)

製造業に欠かせない産業用ロボット。同じ作業を行なうだけでなく、状況に応じてさまざまな判断が行なえる知能ロボットが、製品の生産工程で使用されています。

産業用ロボットでは世界シェアが
3位のファナックは、知能ロボットの開発に力を入れています。「バラ積みロボット」と呼ばれる、バラバラにされた部品をひとつずつ取り出せる知能ロボットをファナックは開発しました。部品の取り出し作業をロボットに任せる場合、部品の形状や位置によって失敗があるといいます。そこで、ビジョンセンサーで部品を撮影し、取り出しやすさをディープラーニングが算出しました。その結果、成功率を10パーセント上昇できました。

参考記事:
AIとロボットの違いとは?プログラムやソフトウェアとの違い点も解説

故障診断(富士通)

製品の修理サービスもまた、製造業にとって欠かせないサービスのひとつです。富士通によると、製品の出張修理件数が、年間で10万から100万件にも及ぶといいます。人件費もかかることから、初回訪問で対処するために、事前の故障診断が必要になります。

故障診断を効率化するために、富士通はAIを活用しました。修理実績データを機械学習にかけ、故障の症状に対応した部品の推定の研究・開発を行なったといいます。AIによって学習させたのが、カスタマーサポートで受け取った顧客が話す故障の症状といった言語データです。どんな異常音がするか、臭いがあるか、錆びがあるか等、項目を用意し、これをもとにAIが故障診断します。

非稼働要因の分析(日立)

近年IoTに力を入れる日立は、工場施設内にカメラやセンサーを搭載し、取得されたデータをもとに、作業の効率化を図ろうとします。

製品を生産する工程で「チョコ停」と呼ばれる、何らかのトラブルで生産設備が繰り返し短時間停止する状況が発生することがあります。チョコ停を一度にすべて解消するのは難しいことから、改善効果の高い原因から解決するといいます。このチョコ停の要因分析に
AIが活用されています。ネットワークを通じて収集された工場内設備に関するビッグデータをもとに、チョコ停の原因の深刻度をAIが算出。その結果をもとに、深刻度の高い要因から改善することで、非稼働時間を短縮し、稼働率の向上が期待されます。

生産計画の自動化(新日鉄住金)

新日鉄住金は、鉄鋼生産プロセスの生産計画の最適化にAIを活用しています。

自動車や造船、家電などさまざまな鉄鋼製品が、高炉から表面処理までの工程を経て製造されます。しかし多種多様な製品に対応するためには、マスカスタマイゼーションが必要だといいます。そこで生産計画の効率化に取り組むために、新日鉄住金は
AIを活用しました。通過工程を決定木を使って予測し、標準工期を算出するといいます。

AI活用を成功させるには

ディープラーニングの登場を端に発する第3AIブームにより、「AIはどんな作業も可能」という雰囲気が蔓延しました。その一方でAIの導入を検討・実施にもかかわらず、設備投資に見合う効率化が行なえていない、あるいはPoC(概念実証)を終えた段階でシステムの実用計画がストップしたという状況もあります。

 

ソフトバンクは自らの経験をもとに、AI導入を乗り越えるための4つの壁を提示しています。

検討の壁

ソフトバンクによると、AIの得意分野を理解した上で、業務課題を特定し要件定義することが必要だといいます。

たとえばディープラーニングは画像認識や言語認識といったパターン認識に強みを発揮します。先述のように、ファナックは画像認識に、富士通は言語認識にディープラーニングを
AIを活用しました。またディープラーニング以外のAI手法、たとえば決定木が日立や富士通、新日鉄住金によって活用されています。作業の効率化ひとつとっても、処理がブラックボックス化したディープラーニングや伝統的な決定木など存在し、活用にはその特性の理解が重要になります。

構築の壁

構築の壁とは、システムの構築が現場の声を反映したものかどうかです。誤ったデータセットをもとに機械学習し、役に立たないシステムが構築されれば、効率化の実現は難しいでしょう。製造業の場合、工場内に設置されたセンサーがデータセット作成に重要な役目を果たします。また富士通の例のように、顧客による故障状況の説明も、カスタマーサポートが適切に受け答えしないと、高精度な故障診断ができないといいます。

導入の壁

導入の壁とは、AIにどの程度まで任せるかです。

ソフトバンクによると、最初から
AIにすべて任せるのではなく、少しずつAIによって効率化させるのが重要だといいます。ファナックの例を借りると、個別作業に対応した知能ロボットの開発が行われています。バラ積みロボットのほかにも、微小な振動を検知し、作業の力の入れ具合を変化させたり、振動を抑えたりする「力制御ロボット」の開発をファナックは行なっています。AIというと、「強いAI」に代表される汎用性の高いアンドロイドを想起しがちですが、一般に活用されるAIは特定の作業を効率化できる「弱いAI」なのです。

定着の壁

定着の壁というのは、そのAIシステムが本当に必要かどうかです。設備投資に見合わないAIシステムならば、必要度は下がるでしょう。とくに新しいサービスに対する保守的な考えは、導入を妨げる要因です。AIのような「破壊的イノベーション」は既存のサービスを衰退させ、産業構造を一変させます。お金や人間など、さまざまな事情がAI定着の壁となります。

AI導入がさらに望まれる製造業

製造業では労働者不足が深刻なことから、AIの導入が期待されています。その一方で、サービス業などと比較し、AIの導入が進んでいないといいます。サービス業では難易度の低いAIのため導入しやすいのに対し、製造業ではAI導入の難易度が高いのが一因です。

3AIブームが開始してはや5年。AIがどの程度活用できるのか、その輪郭がかなり描き出されています。ブームが落ち着いてきた今こそ、腰を据えたAIの活用法が求められるのです。

 

<参考資料>

ものづくり分野における人工知能技術の活用に関する調査報告書

ソフトバンクもAI導入で失敗していた――「3+1の壁」を突破した今だからこそ言えること

我が国の産業構造を支える製造業

「鉄鋼生産プロセスにおける生産計画、スケジューリング技術」(『新日鉄住金技法』No.411)

「故障診断へのAI適用による修理サービスの効率化」(『FUJITSU』Vol.69, No.3)

「ロボット技術、IoTおよびAIの活用による製造業の競争力強化』(『精密工学学会誌』Vol.83, No.1)

「IoTとAIによる製造業の生産性の向上」(『日立ソリューションズ東日本技報』No.24)

「ものづくり現場におけるAI利活用と競争優位の獲得」(『Nextcom』No.37)

「製造業のものづくり現場におけるAIの導入・利活用による新たな競争優位の獲得」(『機械経済研究』No.49)



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Naoki Kitayama

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