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人工知能(AI)

高速な計算を可能にする量子コンピューター AIにどう役立つ?

ハードウェアが一定の速度で進化することを規定した「ムーアの法則。」

ところが近年になり、ムーアの法則が終焉を迎えるだろうという予測があります。その一方で、ハードウェアの速度を飛躍的にアップさせる量子コンピューターの研究が長年行なわれてきました。実はこの量子コンピューター、
AI(人工知能)との相性もよいのです。

そこで量子コンピューターは何かや、AIにどのように寄与するのか、現状や将来性について説明します。

量子コンピューターとは

従来のコンピューターとの違い

量子コンピューターが何であるのかを説明する前に、従来のコンピューター(古典コンピューター)の仕組みを説明します。われわれ人間は10進法で計算を行ないます。一方古典コンピューターの世界では、01しかない2進法ですべての計算を行ないます。ちょうど電気が流れる状態を1、スイッチを切って電気が流れない状態を0とすれば、簡単に2進法を再現できます。たったこれだけの仕組みを組み合わせることで、複雑な計算を行なうことが可能になります。

 

一方量子コンピューターは、ミクロの粒子レベルで起きる現象がコンピューターの動作に応用されます。粒子などのミクロな「モノ」の状態は、「波」の重ね合わせによって表現されます。古典的なコンピューターでは01の値を取る素子が計算機の基本単位でしたが、量子コンピューターでは波が重なった状態の量子ビットがそれに相当します。この量子ビットがもつ波の性質を利用することで、古典的なコンピューター同様に複雑な計算が可能になります。

量子コンピューターが注目される理由

なぜ量子コンピューターが注目されるのかといえば、その処理速度にあります。ネットワーク等のセキュリティを保証するために使用される暗号。このような暗号は計算機で解読しようとしても長い年月がかかるため、破られることが困難です。ところが量子コンピューターを使った暗号解読のアルゴリズムが公開され、その処理速度の高さが理論的に証明されました。

 

伝統的に研究・開発されてきた量子コンピューターは、「ゲート型」と呼ばれる計算機です。その一方で近年注目を浴びているのが「アニーリング型」の量子コンピューターです。ミクロの世界では、「トンネル効果」と呼ばれる粒子が一定の確率でワープする現象があります。最適解を求めるような問題では、このような「ワープ」を利用したほうが、ずっと早く最適解へとたどり着くことができます。このようなトンネル効果を計算機に応用したのが、アニーリング型量子コンピューターなのです。ゲート型量子コンピューターほど計算速度は速くないものの、実現が容易でコストもかからないことから、近年ではアニーリング型量子コンピューターが注目されています。

量子コンピューターはAIにどう活用できる?

量子コンピューターにはゲート型とアニーリング型の2種類ありますが、ゲート型は汎用型であるのに対し、アニーリング型は最適化問題に特化した計算機です。どちらの量子コンピューターもAIにおける処理を実行可能です。しかしながら現状では、実用段階に入っている量子コンピューターはアニーリング型のみ。それでもAIにおける処理を実行可能です。

 

「アニーリング型」量子コンピューターの特徴は、最適解をすばやく見つけることにあります。実はディープラーニング(深層学習)をはじめとするAIもまた、原理的には最適解を求めているのです。ディープラーニングの基礎となるニューラルネットワークでは入力層・中間層・出力層の3層のみなので最適解を求める時間も多くありません。ところがディープラーニングになると中間層が多層化するため計算量が多くなり、結果として最適解にたどり着くまでに時間がかかります。

 

すばやく最適解にたどり着く方法がいろいろ提案されていますが、アニーリング型量子コンピューターは最適解へとたどり着く方法をハードウェアで実現した計算機です。つまり、ディープラーニングが応用できる事例、たとえば画像処理や音声処理などにアニーリング型量子コンピューターの使用が可能です。

参考記事:
AIはどんな分野に応用できる?ビジネスの可能性を広げる技術

 

量子コンピューターの現状

実用化されつつあるアニーリング型

古典的なコンピューターと同様に、量子コンピューターを実現するためには、ハードウェアが必要です。古典的なコンピューターを実現するために現在では半導体が用いられていますが、原理的には電気信号のスイッチのオンオフで実現できます。対して量子コンピューターの場合、粒子などのミクロの世界で起きる事象を使ってハードウェアを構築しますので、非常に難しくなります。

 

アニーリング型量子コンピューターは比較的容易に実現可能です。絶対零度近くの極低温で超伝導状態にある量子ビットを配列し、外部から磁場を与えます。磁場を弱めてゆくと、各量子ビットが01の値を取るので、そこがエネルギーの低い状態、つまり最適解になるのです。

 

アニーリング型量子コンピューターの原理は日本の西森秀稔氏と門脇正史氏が考案しましたが、実際の開発を手掛けたのは2011年にカナダのベンチャー企業D-Waveです。当時は量子ビットが128個だったアニーリング型量子コンピューターも、2017年には2048個まで増やすことが可能になりました。

アニーリング型量子コンピューターの応用例

アニーリング型量子コンピューターで実際に計算させた問題に、組み合わせ最適解問題があります。「巡回セールスマン問題」と呼ばれる、どの経路を辿ると最短ルートになるかを求める問題です。訪問先が少ない場合には簡単に求められる巡回セールスマン問題ですが、訪問数が増えるとルートの選択肢は爆発的に増加します。訪問先が10箇所になるだけで、取りうるルートは約360万通りにも増加します。そのため古典的なコンピューターで最適解を求めるには、ばく大な時間がかかるのです。

 

アニーリング型量子コンピューターで最適解問題を解かせるためには、先述の量子ビットの配列に問題を還元する必要があります。巡回セールスマン問題の場合、アニーリング型量子コンピューターは人間同様に最短経路の「当たり」をつけてゆきます。徐々に制約条件を課していき、続けていった結果、最適解が発見されます。このようにアニーリング型量子コンピューターで問題を解かせる際には、そのアルゴリズムが非常に重要になってきます。

 

アニーリング型量子コンピューターを使った実証実験もすでに行われています。ドイツの自動車メーカーのフォルクスワーゲンは、D-Waveを使って、北京市内から北京空港までの最適な移動経路を求める実験を始めました。最短経路を求める問題は、MaaSMobility as a Service)とも深く関係があります。ライドシェアなどのサービスを実現し、交通の効率化を図るMaaS。最適なクルマで、どのタイミングでどのクルマにどの乗客を乗せれば効率よくクルマを運用できるかなどが、ウーバー(Uber)等の企業がAIで計算しています。アニーリング型量子コンピューターで実現可能になれば、さらなる計測時間の短縮が期待されます。

 

このほかにも、野村ホールディングスがアニーリング型量子コンピューターを活用して、どの株をどの割合で購入すれば最適な利益を得られるのかを提示するポートフォリオの作成に、D-Waveを活用した実証実験を行なっています。

 

このように最適化問題に特化したアニーリング型量子コンピューターは、AIの処理をすばやく行なうことができます。

参考記事:
自動車産業を一変させるMaaSとは。IoTとのつながりは?

実用化が困難なゲート型

他方ゲート型量子コンピューターの場合、実用化が困難です。IBMがいちはやくゲート型量子コンピューターの実機を完成させました。2016年の段階で量子ビット数はたった5。そのため計算できることは限られてきます。現在、マイクロソフトやGoogleは実用可能な量子コンピューターの開発に力を入れています。現状で開発されているIBMの量子コンピューターの素子数は50ほどで、これを実用化レベルにするには、100を超える必要があるといいます。

 

ゲート型量子コンピューターの実現が難しいのは、素子(量子ビット)の部分です。ミクロの現象を利用してコンピューターを実現しますが、ノイズなどの電磁波の影響を受け、システムが壊れてしまうのです。従来のコンピューターでも誤り訂正を用いることで、システムの安定性を保つことができますが、量子コンピューターの場合、誤り訂正を行なっても、大規模なバックアップが必要だといいます

量子コンピュータの将来性

ゲート型の量子コンピューターはいつ実用化されるのでしょうか。

 

EU2016年に発表したQuantum Manifestoによると、量子コンピューターの本格的な利用は、2035年以降と予想されています。素子数が100でも、スーパーコンピューターと同程度の処理能力をもつ量子コンピューター。実現すれば、あらゆるシーンへの活用が期待されます。

 

現段階で量子コンピューターの利用をもっとも期待できるのが、創薬です。医薬品を作るためには、病気の原因をナノレベルで突き止める必要があります。どのタンパク質が病気と関連があるかやどの化学化合物をタンパク質に結合させれば病気に効果があるか等を検討し、薬の種が特定されます。しかしながら化学化合物の数は膨大なため、実際にタンパク質と化合物とを結合させて病気に有効か検証するには、時間と費用がかかります。そこで計算機上でタンパク質をシミュレートし、化学化合物と結合できるかを計算するバーチャルスクリーニングが注目を浴びています。

 

このバーチャルスクリーニングにはスーパーコンピューターが用いられるなど、莫大な計算量が伴います。量子コンピューターが実用化されれば10年もかかるといわれる創薬の期間が短くなることが期待されます。現状では一部の研究機関でしか所有されていないスーパーコンピューターですが、量子コンピューターが実現すれば利便性は向上し、状況は一変するでしょう。

ムーアの法則を打ち破る量子コンピューター

量子コンピューターにIT企業が熱を上げるのは、そのポテンシャルの高さゆえです。ハードウェアの世界ではムーアの法則の終焉が叫ばれ、計算速度の向上の限界が見えてきました。そこでソフトウェアで計算能力を上げる手段として、Googleなどが取り組んだのがディープラーニング等のAIです。ディープラーニングの登場で、人間の作業を部分的に代替できることを証明しました。

 

AIが学習するのに必要なビッグデータを処理するためには、大規模なコンピューターが必要です。アニーリング型量子コンピューターはAIとの親和性も高く、すでに実証実験が行われています。またゲート型量子コンピューターが完成すれば、創薬などスーパーコンピューターを要する計算の高速化が期待されます。

<参考資料>

組合せ最適化問題」をアニーリング方式で解決する「デジタルアニーラ」とは

誤差逆伝播法を使わない学習手法、Feedback Alignment、Synthetic Gradient、Target Prop

「ゼロからわかる量子コンピューター」(『ニュートン』2018年5月号)

「新型の量子コンピューター」(『ニュートン』2017年5月号)

「ユーザー企業の検証も始まる 量子コンピュータの現在」(『NIKKEI SYSTEMS』2018年8月号)

「量子コンピューター研究開発の現状と将来ー量子アニーリングを中心としてー」(『技術と経済』2018年9月号)

「量子コンピュータのハードウェア大研究」(『Interface』2019年3月号)



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Naoki Kitayama

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