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人工知能(AI)

ベンチャーも触手を伸ばす創薬。AIはどう貢献する?



ビッグマネーが動く創薬の世界。薬を創る工程や薬を構成する成分そのものが複雑化し、近年ではスーパーコンピューターを活用した創薬がトレンドになっています。

 

ゲノム解析や薬の成分となる化合物の特定など、創薬を含めた生化学でビッグデータが扱われます。このデータを処理できるのが、ディープラーニング(深層学習)等のAIです。そこで、近年の創薬の動向を踏まえつつ、AIが創薬にどのように貢献するのか、そして日本や海外での創薬の動向をAIに限らず俯瞰していきます。

参考記事:医療・ヘルスケア分野におけるでのIoT活用事例を紹介!

創薬とは

5000年以上の歴史をもつ創薬

創薬といっても、古くはメソポタミア時代から存在していたといいます。また中国医学で用いられる漢方など薬のバリエーションは幅広いですが、近代科学の進歩とともに創薬は精緻化してゆきました。

 

薬は口から摂取すると小腸から吸収され、肝臓から血液中へと流れます。薬の成分が体へと作用するには、細胞内にあるタンパク質からできた受容体と結びつく必要があります。これらが結びついた結果、病気に対し効果が与えられるのです。

薬が創られるまで

薬を創るためには、病気のメカニズムを知る必要があります。現代では遺伝子レベルで病気の原因を追究できるだけでなく、個人の遺伝子情報によって効果的な薬をオーダーメイドで提供できるようになりました。

 

病気のメカニズムが判明すると、次に行われることは病気に効果的な化学化合物の発見です。このような化学化合物は天然に存在するとは限りません。これまで実施された創薬において、膨大な化学化合物のデータが蓄積されています。このビッグデータからスクリーニング(ふるい分け)することで、新薬の種(シーズ)が発見されます。

 

新薬の種が発見されると、マウスを使った実験やヒトによる治験などが繰り返されます。また近年では、ヒトの組織や臓器細胞へと分化させられるiPS細胞が創薬にも役立ちます。iPS細胞から分化した人工的な細胞により効果的な薬の候補を絞ることが可能です。いずれにせよ、マウス実験や治験を繰り返すことで実用化される薬は8パーセントに満たないといいます。そのため、創薬には莫大な費用が必要です。

AIはどう創薬に活用される?

ばく大な化学化合物から新薬を探索

人工知能(AI)は主に、新薬の種となる化学化合物をビッグデータからスクリーニングする際に用いられます。

薬のほとんどは炭素を含む有機化合物ですが、数十から数千もの炭素原子を含む分子まで存在し、その構造も直線状の分子から環状の分子、分岐した分子や
3次元構造をもつ分子までさまざまです。「CAS」というデータベースへの登録数が9000万種類以上、未登録の有機化合物まで含めるとその数倍あるといわれています。そのため、膨大な化学化合物のデータから新種の種を見つけるには、人手だけでは困難なのです。

バイオ情報も重要

そこで近年注目されているのがビッグデータ創薬です。ビッグデータに当てはまるのは、データベース化された化学化合物だけではありません。遺伝子情報はもちろんのこと、薬の成分と結合するタンパク質(受容体)の立体構造など、多くのデータが創薬に役立てられます。従来はビッグデータから新薬の種を推定するモデルが用いられてきましたが、近年着目されているのがディープラーニングをはじめとするAIです。

 

ディープラーニングの特徴は、ビッグデータを学習することで人間には発見できない法則性を見つけ出せることです。研究者がわざわざモデルを作る必要もなく、学習により最適解が求められます。新薬の種となる化学化合物とタンパク質の結合には、その構造も重要であることが明らかになっています。そこでタンパク質と結合しやすい化学化合物の設計などに、AIの使用が期待されます。

創薬以外にも化学化合物の発見に役立つAI

創薬に限らず、目的にかなった新しい化学化合物の発見にもAIは活用されます。どの元素をどの割合で含めば、目的の化学化合物が完成するかなどの推定にも、AIは応用されているのです。マテリアルズインフォマティクスと呼ばれる分野では、研究者が発見した膨大な化学化合物の成功例と失敗例から新素材を導くといいます。たとえば金属ガラスなど特殊な無機化合物の探索にAIを活用すれば、発見の時間が大幅に短縮できるようになります。

 

このように薬学を含めた化学の研究にはAIの力がますます必要とされるでしょう。Googleもまた新薬の種を発見するスクリーニングを米スタンフォード大学と共同で研究・開発しているといいます。また創薬を手掛けるベンチャー企業も登場しています。

参考記事:
【徹底解剖!】AIをけん引するGoogleの取り組みとは?

AI創薬の現状

AI創薬を牽引する日本の団体

日本でも、京都大学や理化学研究所などを中心に、「ライフインテリジェンス コンソーシアム(LINC)」が201611月に誕生しました。創薬だけでなく、化学や食品、医療やヘルスケア関連でAIやビッグデータ技術を開発し、その技術を健康長寿に役立てるといいます。LINCには2018年現在、IT関連企業やライフサイエンス関連企業、研究機関など90以上の団体が参加しています。

 

先述のように、スーパーコンピューター等の大型計算機をした創薬は従来から行われてきました。1990年代には化学化合物やタンパク質の立体構造の予測や、標的タンパク質と合致するリード化合物の分子構造を推定する「分子シミュレーション」、機械学習などの計算科学的手法を用いた創薬(インシリコ創薬)が開始されています。しかしながら、スクリーニングによる新薬の種(ヒット化合物)の発見や、そこから良性の化学化合物(リード化合物)を探索するといった限られた工程でしか、計算機による効率化は行われてきませんでした。LINCでは、新薬の種のスクリーニングだけでなく、治験(臨床試験)などあらゆる工程でのAIの開発を目指しているといいます。

創薬を支えるスーパーコンピューター

先述のように、新薬となる有機化合物は理論上ばく大な数存在するため、スクリーニングを行なうためには、スーパーコンピューターが使用されます。日本の場合、国内最高速を誇ったスーパーコンピューターである「京」が用いられてきました。スーパーコンピューターの移り変わりが速く、AI処理に特化した産業技術総合研究所のABCIや東京工業大学が保有するTSUBAMEなど、「京」よりも性能の高いスーパーコンピューターが続々と登場しています。

コストのかかる医薬品開発

医薬品の開発には10年以上の歳月と約千億円以上の開発コストがかかるといいます。低分子化合物の分子構造だけでも、理論上1060乗を超えるオーダーであるため、実際の化学化合物を使った実験だけでは、作業時間がかかるだけでなく、開発費用も膨れ上がります。そこで、コンピューター上でタンパク質を再現したバーチャルスクリーニングが試みられています。

 

しかしながら、スクリーニングにより新薬の種を発見できても、毒性がないなど良性の「リード化合物」の探査など、医薬品レベルにまで品質を高めるのは困難で応用研究の難しさが指摘されます。実際に臨床試験にまでたどり着くだけでも、その確率は高くありません。そのため低分子の創薬に関しては、欧米の大手製薬企業ではアカデミアやベンチャー企業に任せて開発リスクを減らす動きが加速しているといいます。

海外における創薬

では、海外での創薬の状況はどうでしょうか。

10年で倍増の医薬品市場

医薬品開発はほかの産業と比較しても、売上高に対する研究費の割合が群を抜いています。先述のように、医薬品として実用化させるための工程の複雑化により、創薬にかかる費用も年々増大。長い年月とばく大な費用が製薬企業に課せられます。加えて、病気の原因となるシードの特定から、受容体と合致するリード化合物のスクリーニングまででも、成功確率が非常に低い状況です。そのため医療品として販売されるまでのリスクが非常に高く、低分子創薬ではベンチャー企業や大学研究機関にリスクを負わせています。

 

その一方で、世界の医薬品市場は年々伸びています。1998年には3,067億ドルだった市場規模は、10年後の2008年には7,732億ドルと倍以上に成長しています。その一方で、日本の占めるシェアが14.2パーセントから10.0パーセントに下落しているだけでなく、日本初の医薬品もシェアほど誕生していないのが現状です。

オープンイノベーションがもたらす創薬

医薬品業界に限らず近年注目されているのがオープンイノベーションです。大企業の場合製品の大量生産に備えて組織が効率化されすぎているため、リスクの高い新規製品の開発に手を出しにくい状況になっています。製薬業界も同様で、医薬品の開発にはばく大な費用がかかるだけでなく、医薬品の実用化にまでこぎ着けられる確率も低いことから、そのリスクはベンチャー企業や大学研究機関に委ねられています。

 

アメリカのシリコンバレーや中国など、ベンチャー企業が次々と誕生し、ユニコーン企業にまで成長する企業も少なくありません。バイオテクノロジーはもとより、IoTAI、ロボットといった最先端のICT技術や宇宙開発など、さまざまなテクノロジーの登場により、ベンチャー企業に参入する起業家が後を絶たない状況です。

 

日本でも幾度かベンチャーブームが誕生しましたが、ディープラーニング(深層学習)が登場した2010年代になり、ベンチャーブームが再び起きました。その背後には、新規一括採用や終身雇用制という日本従来の就業システムへの危機感もあります。AI分野同様に大学の研究をベースとして大学発ベンチャーなどが誕生しています。その一方で、日本だけでなく、欧米の創薬ベンチャーとの連携を製薬メーカーが行なっている状況です。

 

創薬ベンチャーにとって、医薬品になる可能性のある新薬の種を見つけることが主な事業です。とはいえ医薬品開発にはばく大な費用がかかるため、日本よりも積極的にベンチャーへの投資を行なうアメリカの存在感が高い状況です。低分子医薬におけるインライセンスの相手国は、全体の58パーセントがアメリカで、日本の22パーセントを大きく上回ります。

参考記事:
破壊的イノベーションを誘発するベンチャー企業 国内AIベンチャーの将来性は?

AI創薬の下地はほぼ完成

サービス業や製造業と比較してAIの活用が明確にもかかわらず、医薬品開発にかかるばく大な費用と実用化までのリスクの高さ、スクリーニングのための大型計算機の必要性など、AI導入への障壁は他業種に比べて高いといえます。その一方でスクリーニングを行なうスーパーコンピューターの開発や、医薬品を生み出すAIプラットフォームづくりを行なうLINCの創設など、日本でもAIやビッグデータを活用した創薬のインフラは完成されつつあります。

 

医薬品市場の拡大と、オープンイノベーションによる医薬品開発状況などから、AI活用による創薬の効率化が期待されます。

参考記事:
AIの導入事例を紹介!AIにできることや企業がAIを導入する方法もあわせて解説

 

<参考資料>

日本の製薬産業-その規模と研究開発力-

製薬産業におけるライセンス・イン/アウトの難しさ

「国内製薬メーカーのアライアンス分析(続報)」(『バイオサイエンスとインダストリー』(Vol.77 No.2)

「オープンイノベーション:日本と欧米の比較」(『細胞工学』Vol.32 No.6)

「創薬の初期研究におけるデータベース構築とモデリング」(『学術の動向』2017年7月号)

「インフォマティクスとシミュレーションを融合したインシリコスクリーニング」(『学術の動向』2017年7月号

「LINCの設立とAI創薬」(『医療ジャーナル』Vol.54 No.9)

「分子シミュレーション」(『医薬ジャーナル』Vol.54 No.9)

「ビッグデータ創薬」(『最新医学』Vol.74 No.3)

『くすりの科学知識』(ニュートン別冊)

『図解入門 よくわかる最新「薬」の基本としくみ』(ジェーシーエヌ 編著)

『くすりをつくる研究者の仕事』(京都大学大学院薬学研究科 編著)

『AI創薬・ビッグデータ創薬』(田中博 著)



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Naoki Kitayama

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