英語の聞き流し学習は、忙しいビジネスパーソンでも、手軽にできる学習方法の1つです。果たしてこの学習方法は、本当に効果的なのでしょうか?

率直に申しますと、聞くだけでは話せるようになりません。その理由を以下3点にまとめました。

・インプットとは聞くだけではなく、また読むことであるから

・意味が分からないものを聞いても、効果がないから

・発音が分からないまま聞いても、身につきにくいから

 

今回は第二言語習得論(Second Language Acquisition(以下:SLA))の観点から、考えます。

インプットとは聞くだけではなく、また読むことであるから

そもそもインプットとは、どういったことを指すのでしょうか。SLAではインプットを”聞くことに加え、読むことである”と定義づけています。なぜなら聞き取りだけだと、インプットとして不十分だからです。

聞き取りは単語自体に注意が行きがちで、文法項目の処理がおろそかになる傾向にあります。文法への理解がおろそかになるインプットを「インプット仮説の落とし穴」といいます。具体的に示せば、

・Yesterday I walked three miles.(昨日は3マイル歩いた)

という英語の文章を聞いたとします。この場合、文頭のYesterday(昨日)さえ聞き取れれば、walked(歩いた)の-edが聞き取れなくても、過去を表した文章だと認識できますね。このように文法項目(-ed)が聞き取れなくても、単語(yesterday)さえ聞き取れれば、大体の意味がわかります。つまり細かいところまで注意がいきません。

このことから、「聞き流すだけの英語学習に加えて、英文を読む必要がある。」と言えます。聞き取りだけでは不十分。英文を読むというインプットを加えて、初めて英語を話すための土台が完成するのです。

意味が分からないものを聞いても、効果がない

聞き流し教材が支持されたのは、「英語が話せるようになるために、話す練習をしなければ駄目だ」という既成概念を覆したからです。

しかしSLAの観点から言えば、ただ話したり、聞いたりしても話せるようにはなりません。なぜなら話すことや聞くことを繰り返しても、単語や文法などの新しい知識が入ってくる訳ではないからです。話すことも聞くことも、すでに持っている知識で何をするか、というだけの話といえます。ですので聞き流す前に、単語や文法の知識を蓄えておく必要があります。

「意味が分からないものを聞き続けたところで、効果は出ない」ということを言語学者のクラシェンは「理解可能なインプット(comprehensible Imput)が言語習得の必須条件」と主張しました。

SLAでは、「聞くことは、音の流れに意味や構造を瞬時に結びつける」という難易度の高い作業だと考えています。そのため意味を理解した上で英語を聞かなければ、聞き流しても意味がありません。

発音が分からないまま聞いても、身につきにくいから

聞き流すだけの英語学習をする前に、正しい発音を理解しているかどうかで、聞き流し学習の効率が変わります。

正しい発音が分かれば、わからない単語と遭遇した際に、何度か聞くだけで、どの単語を指しているのか、推測できます。しかし正しい発音がわかっていないと、何回聞いても、全く訳のわからない単語としか認識できません。

聞き流し教材を通して、正しい発音を学ぶことは可能でしょうか。以下は「聞くだけで話せる」系教材の公式サイトから引用したものです。

例えば「ゲッ、イッ?」と聞こえたとします。そんな英単語あったかな?と確認すると「Get it」でした。
このように、英語は子音が脱落して聞こえないことが多く、「ゲット イット?」と発音するアメリカ人はいません。
耳で聞いたままの音を右脳にインプットし、そのとおりに発音する。
これがきれいな英語を話す秘訣です。
『教材名○○』の利用者が、きれいな発音で話せるようになる理由は、
ネイティブの発音を聞こえたままインプットしているからです。

(「聞くだけで話せる」系教材の公式サイトから引用)

聞き流し教材における、正しい発音を学ぶ方法を簡潔にまとめるなら「聞き取れない単語を見つけるたびに、その単語の音声を耳で覚える」という方法です。つまりいつまで経っても、わからない単語が出てこれば、付属のリスんング文章を読んで、どの単語かを確認しなければなりません。

正しい発音を学んでいれば、いちいち上記のような効率の悪い作業を繰り返す必要はないのです。

聞き流しを効果のある学習に変えるためには

英語の聞き流し学習は全く効果がないかというと、そのようなことはありません。ただし、いくつか学習上の工夫が必要です。聞き流しの学習を効果的にする方法は、以下の通りです。

1.聞き込む文を事前に精読、音読する
2.自分のレベルに合った教材を使用する
3.発音矯正を行う

1.聞き込む文を事前に精読、音読する

これは、聞き流すだけでは話せない1つ目の理由「インプットとは聞くだけではなく、また読むことであるから」の解決策です。文法への理解がおろそかになる「インプット仮説の落とし穴」に陥らないため、聞き流す前に精読(声に出さずに読む)と音読(声に出して読む)を行います。

精読学習は、単語の意味と文法項目が理解できることを目的とします。わからない単語や文法があれば、辞書を使って日本語に訳したり、文法書を使って用例を確認したりします。

次に音読学習を行います。精読を通して、十分に理解した英文をひたすら音読します。自分が声に出して読んだ文章を自分の耳で聞くことで、その文章に馴染みが生まれます。結果として聞き流した際に、聞き取りやすくなります。

※音読学習の重要性は以下の記事をご覧ください。

参考:英語音読の重要性|英語学習の基礎段階においては音読の量が重要である事

2.自分のレベルに合った教材を使用する

これは、聞き流すだけでは話せない2つ目の理由「意味が分からないものを聞いても、効果がないから」の解決策です。聞き流し学習を効果的にするためには、単語や文法の知識を蓄えておく必要があります。しかし聞き流したい文章1つを理解するまでに、時間がかかりすぎていると、学習を続けるのが苦痛になります。

サウスピークでは、日本人スタッフに使用する教材に関して、相談をすることが可能です。

だからこそ、聞き流したい英語の文章は、自分の英語力にあったものを選ぶと良いでしょう。例えば英語初級者(TOEIC200点〜300点)であれば、中学英文法しか使用していない英文で構成された教材を使用すべきです。

3.発音矯正を行う

これは、聞き流すだけでは話せない3つ目の理由「発音が分からないまま聞いても、身につきにくいから」の解決策です。正しい発音を身につけるには、口の形、舌の位置、息の吐き出し方を学ぶ必要があります。加えて、効率よく聞き流し学習を行うには、一通りの英語(子音と母音)の発音方法を理解しておくべきでしょう。

もし正しい発音に矯正したいのであれば、フィリピン留学を推奨します。なぜなら発音矯正の機会において、フィリピン留学を超えるものは存在していないと考えるからです。

結論から言えば、フィリピン留学ですと、低価格で質の良い発音矯正レッスンを受講できます。一方でオーストラリアやカナダなどにある語学学校でも、同様に発音矯正レッスンが存在します。しかしそれらはグループレッスンです。フィリピン留学のようなマンツーマンレッスンと比べて、一人当たりに対する指導の時間が相対的に少なくなります。

またフィリピン留学と比べて、倍以上の費用がかかるというデメリットがあります。つまりフィリピン留学における発音強制は、コストパフォーマンスが良いのです。

参考:東京でも。フィリピン人トレーナーによる発音矯正レッスン

   英語発音矯正レッスン。フィリピン語学留学で最も効果的なレッスン

「簡単に英語力を上げられる」幻想をみせた聞くだけ教材

要点をまとめると、以下の通りです。

・聞き流す前に、精読や音読などを通して、文章を読む必要がある。
・聞き流す前に、単語と文法知識を十分に身につけておく必要がある。
・聞き流す前に、発音矯正レッスンを通して、正しい発音を身につける必要がある

そもそも「聞くだけで話せる」系教材が流行った理由は、簡単に英語力が上がると思わせたからです。聞き流すだけということは、座学をする必要がありません。座学の英語学習が中心だった学生時代、英語に挫折した人でも、「英語が話せるようになるかもしれない」と期待してしまいます。

SLA(第二言語習得論)では、第二言語を習得するために「大量のインプットと大量のアウトプットが必要」としているように、座学を含めたインプットは避けては通れません。

フィリピン留学・サウスピークにおける半年での学習量。(1人分)1人では持ちきれないほどの参考書の量です。

例えば、英語初級者レベルのTOEIC300点から英語中級者レベルの600点まで到達するには、1000時間から1200時間が必要だと言われています。1日30分の聞き流すだけの英語学習で換算すれば、5年以上(2000日)かかります。

(参考リンク:TOEIC L&R試験の点数を上げるために必要な学習時間

そのように量的に見ても、聞くだけでは話せるとは言えません。「1日5分から、隙間時間に聞き流すだけで良い」という謳い文句に騙されることなく、英語学習に取り組んでみてはいかがでしょうか?

参考文献:

英語教師のための第二言語習得論入門 著者・白井恭弘 発行所・大修館書店

CDBフォニックス<発音>トレーニングBOOK 著者・ジュミック今井 発行所・明日香出版社