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2年前までフィリピン人に英語を学んでいた私が、今度はフィリピン人に英語で仕事を教える事に。今回は4ヶ月のマニラ出張について書きたいと思います。

↓ 第一回目の記事はこちらです。
第一回 就活失敗、自分を変えたいという思いでフィリピン留学を決意

社会人1年目で海外出張

大学卒業後、TOEIC250点から7ヶ月のフィリピン留学を経て、今の会社に入社、私の社会人としての生活が始まりました。会社はドイツ資本のアウトソーシング事業をしている会社で、勤務地はシンガポールです。

先日、部署内で1名の出張者を出す事になりました。

出張先はフィリピン・マニラ。目的は、フィリピン人従業員に仕事を教え、新部署立ち上げのサポートする、というものです。出張者として、マネージャーから声がかかりました。

「もちろんまだ1年目なので仕事の経験も知識も十分ではないかもしれないけれど、Nariはそれを補うポテンシャルを持っている。よかったらマニラに出張に行ってくれないか」こんな事を言われたと思います。

チーム内には私より長く働いている人はたくさん居ますが、 これまでの能力の伸びとポテンシャル、日頃から様々な事に手を挙げる積極性を買い、私を選んだと後から聞きました。

困難だらけの毎日

程なくしてマニラでの勤務が始まったのですが、とにかく毎日が大変でした。

まずは、同じ立場としてヨーロッパオフィスから来たポルトガル人と一緒に1ヶ月間、フィリピン人従業員のトレーニングです。ヨーロッパオフィスから来た彼は30代のローワーマネジメントポジション。日本企業の係長の役職に近いと思います。仕事の知識は豊富で、頭のキレもよく、非常に分かりやすい説明をします。

仕事を教えるのが上手いので彼に聞いてみると、ヨーロッパオフィスでトレーニングはいつも行っていて、これまで数百人に仕事を教えた、と言います。一方で、私は1年目なので仕事を教わった経験しか無く、教えた経験などありません。彼が係長ならば私は新入社員です。

しかし、そんなこと言っていられません。私は彼と同じ立場としてマニラに来ているのです。

数十人のフィリピン人スタッフの前に立ち、仕事を教えます。もちろん全て英語で進みます。初めての経験で正直かなり緊張していましたが、一緒に仕事をしたポルトガル人の彼の助けもあり、なんとかトレーニングは無事に進んでいきました。しかし仕事はトレーニングだけではありません。中でも精神的にきつかったのが、ヨーロッパ・アメリカオフィスとの週2回のコールミーティング。各オフィスからマニラに来た出張組と各オフィスに居るマネジメント陣が参加するSkypeミーティングです。

ヨーロッパオフィスとアメリカオフィスの時差に合わせるため、ミーティング開始はシンガポール時間の23時。シンガポールオフィスは勤務時間外なので、シンガポールオフィス側からは私のみの参加、ということが度々あり、シンガポールオフィスを代表して答えなくてはいけないという場面が多々ありました。

会議の参加者はネイティブスピーカーが大半を占め、流暢な英語で会議が進みます。彼らの話を理解するのにもひたすら集中、時には急に質問を振られたりと、ミーティング中はもちろん、ミーティングの数時間前から緊張していました。

新部署立ち上げの苦悩

1ヶ月のトレーニングが無事に終わり、ここからは新部署立ち上げの支援です。3ヶ月のサポート期間中に新部署を軌道にのせ、3ヶ月後にはサポート無しで十分に仕事が回るようにしなければなりません。

仕事は某巨大IT企業のライセンス管理で、私が支援したのはライセンスの発注処理をする部署です。ライセンス発注にはたくさんのルールがあり、仕事は非常に複雑です。

しかし、発注処理は自社・アウトソーシング依頼先企業やエンドユーザーの収支に直接的に関わるため間違いは許されません。また、対象は大企業や政府関連機関になるので、非常に大きい金額を扱います。高いクオリティの仕事をする、ということは最重要ポイントです。

しかしこの一番重要な仕事のクオリティが不合格のレベルからスタートし、十分に改善出来ない時間が長く続きました。

シンガポールオフィスで最終チェックが行われた後に発注処理が完了するため、マニラで行われた処理に万が一ミスがあっても直接会社やお客さんに迷惑がかかる事を防げるのですが、シンガポールオフィスから私の元に頭が痛くなる程の数のフィードバックが毎日来ます。

なかなか仕事のクオリティが上がらない根底に何があるのかを数日考えたところ、出た答えが「プロ意識」でした。

マニラオフィスでは、常に皆で和気あいあいと仕事をする、という雰囲気があり、仕事中はいつも冗談を言い合っています。正直に言うと私はこの雰囲気が嫌いで、居心地があまり良くありませんでした。

ただ、私の支援している部署だけでなく、マニラオフィス全体がそのような雰囲気で、話を聞いてみると、どこでも変わらないと皆口をそろえて言います。

それはフィリピン人の性格で、それを否定したってしょうがないという結論に達しました。別に楽しく仕事するのは悪い事でないし、黙って仕事しろなんて言うもんなら、それは彼らにとって息苦しい環境でしかありません。ただ、どうしてもプロ意識は持ってほしい。また、意識を変えれば仕事のクオリティも良くなるという考えもありました。

フィリピン人従業員の意識を改善する

シンガポールオフィスでは一番下のポジションとして働いているものの、マニラにオフィスに来て、気づいた頃には既にマネジメントの視点になっていました。

どうしたらフィリピン人従業員の意識を高め、仕事へのモチベーションとクオリティを上げられるのか。幾つか策を練り、実行しました。

一つ目は自分の経験のシェア。自分がどのような考えで仕事に臨み、どのような困難があり、どう乗り越えたか。結論を言うと、これは全くと言っていいほど効果がありませんでした。

正直に言えばこれは自信があった策でした。シンガポールオフィスでの私は彼らと同じポジションなのです。同じ立場としての困難を語れば、彼らに共感してもらえると思っていました。

しかし、恐らく彼らかしたら熱血すぎる、または意識が高すぎて自分ごとに出来ない部分が多くあったのだと思います。一つ目の策は失敗です。

一つ目の失敗を元に、次に練った策はデータ。感情で失敗すれば次は逆のアプローチです。

誰がどれだけの仕事量をこなし、1件の案件につきどれだけ時間がかかった、というのは全てシステムで記録されます。また、クオリティもシンガポールオフィスからフィードバックが来るため、それらのデータを全て引っ張り出し、各スタッフの個人データをまとめ、定期的に全員に共有しました。

これまで彼らが意識していなかった仕事の成果を数値化し、意識させることと、競争意識を持たせるのが目的です。

これが大当たり。非常に効果的でした。

各スタッフが自分の仕事量、仕事の速さ、クオリティと、自分の成果や弱みが具体的な数字でわかるようにしました。また、他のスタッフの数字も分かるため、モチベーションを高めるのにも効果的でした。

数字が良かった人に対しては人前で褒め、感謝の気持ちを伝えました。

一方で、人と比べて数字が良くないスタッフももちろん居ます。全員の数字を共有すれば彼らのモチベーションを低下させるというリスクもあるでしょう。人と比べられる事でプレッシャーになる人もいるかもしれません。全員の成果を公開するか判断に悩みましたが、私は公開する選択をしました。

あくまでこれは私の意見ですが、数字の低い人がそれをネガティブに捉え、モチベーションを下げるならば、そんな人は今後伸びないと思います。そういった人に注力を捧げるよりも、伸びるポテンシャルを持った人たちに刺激を与える方がよっぽど賢いやり方だと私は思います。

ただし、他の人と比べて劣る人にわざわざ何か言う、直接的にプレッシャーを与える事を私は決してしませんでした。まず自分の立場だったらそれは嫌だし、何よりもそれはフィリピン人に合っていないと思ったためです。

3ヶ月の部署立ち上げサポートを終えて

今までと違うポジションとしての仕事だったため、正直大変で、疲れていても寝付けないような日がよくありました。

問題をたくさん抱えていましたが、一つ一つ根底にある問題を捉え、具体的なアクションを起こし、軌道修正をしながら問題を解決していきました。

これはサウスピークでの語学学習時に行っていたアプローチと同じで、仕事にも大いに役立っています。

部署立ち上げ当初からの課題であった、フィリピン人スタッフの仕事のクオリティ、仕事をこなす速さについては私がもう言う事が無いくらい改善しました。これは数字でもはっきり現れています。

また、私がどうしても彼らに持って欲しかったプロ意識については正直、私の満足いくレベルではありません。しかし、これは私の理想が高く、求めすぎている部分もあると思います。
しかし、以前に比べればかなり改善しており、現在の仕事の速さとクオリティから客観的に考えれば合格レベルなのかもしれません。

マニラ出張では、チームを一から作るサポートをし、試行錯誤しながらアクションを起こし、チームが良くなっていくのが実感できました。改善は数字でもはっきりと現れ、これは非常に面白味があり、やりがいになりました。20代前半でのマネジメント経験はなかなか無いチャンスで、良い経験をされてもらったと思っています。

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また、出張後に受け取った評価では非常に良い評価をもらいました。新入社員が係長として海外出張。寝付けなくなる程の苦悩もありましたが、なんとかプロジェクト成功へと導けました。

現在はシンガポールオフィスに戻り、以前と同様に一般ポジションに戻りましたが、4ヶ月の出張で得た事を生かし、他の同僚とは違った目線やアプローチでこれまで以上にチームに貢献できればと思います。また、いずれは組織を動かす立場として働きたいです。

以上で4回に渡る私の記事は終わりです。

就職活動が上手くいかず、英語も努力も全く出来ない新卒無職だった私が現在ではシンガポール勤務と、フィリピン留学前には全く想像のつかない人生を送っています。

一つ言える事は、7ヶ月のフィリピン留学が私の人生を広げた、ということです。

何かに本気で取り組み、苦難を乗り越え、成果を出し、目標を達成する。

壮大な事のように感じますが、誰でも、小さな事からでも始められます。小さな成功体験の積み重ねが自信になります。説教臭いですが、これは私がフィリピン留学で得たことです。

第五回 新卒海外就職から昇進、20代外資マネジメントでの苦悩と新たな決意