・英語がわかる日本人として働けている

・海外に出たことで自分の市場価値がわかった

名前 Yutaさん
年齢 29歳
就労国:マレーシア・日系IT企業勤務、ITインフラエンジニア

本記事ではITインフラエンジニアとしてマレーシアで働くYutaさんのインタビュー記事です。「日本以外でも働ける」ことは「人生における選択肢の分母が大きくなる」ことだそうです。詳しくは下記をご覧ください!(神農)

英語ができる、技術がわかる、日本人として働けること

ーーまずは現在のお仕事について教えていただけますか?

マレーシアにある日系IT企業で、ITインフラエンジニアの仕事をしています。主に携わっている業務は、企業向けのセキュリティサービスのシステム運用です。安定したサービスを提供し続けるために、日々の稼働状況チェックやシ ステム更新、あとはもちろん障害対応も行います。

元々日本の親会社で作っていたシステムを、シンガポールのデータセンターにシステムを構築しまして、マレーシアを拠点にASEAN向けにサービス展開をしているんですね。そのシンガポール側のシステムの管理をするのが私の仕事です。実はつい最近、中国でも同じシステムを構築、中国国内でサービスを展開することになりました。社内での経験も踏まえ、中国のプロジェクトにも抜擢されまして、先週上海にも行ってきたんですよ。

ーーおお、すごい。お仕事順調そうですね。そうやって海外で仕事ができる人だから、元々マレーシアで採用されたんですか?

私が採用されたのは、技術面で求められていることと、私ができることがちょうどよくマッチングしたからですね。ASEANでサービスを展開するためにシンガポールにシステムを構築するときに、海外拠点で働けて、かつ技術力がある技術者が必要でした。

それに、シンガポール・マレーシアの外国人社員と英語でコミュニケーションをとることができる必要もありました。一方で、日本の親会社に在籍している日本人社員と密にやりとりをする必要があるため、日本人技術者として日本で働いてきた経験がなければいけません。やっぱり日本の親会社との具体的な仕事の話は、日本語で行われます。

ーー例えば、日本人と同じくらい日本語ができる外国人技術者がいたら、そういう方でも代わりになるものですか?

日本語で会話ができて、日本語ドキュメントを読めないといけないので、現実的に日本人以外では厳しいのではないでしょうか。設計の仕様書、手順書はすべて日本語です。密な連携をとる相手が日本人なので、もちろん仕事のやり方も日本的なものであったりもするんですよ。

ーー日本に住む日本人とコンセンサスをとって仕事を進めていくなら、日本人の方がいいということですね。

例えば、同僚のあるマレーシア人社員は日本の大学を卒業していて、日本語も流暢に話しますし、なんとビジネスメールも日本語で書けるんです。それでも、日本人だらけの会議に参加すると、わからない部分が出てくるようです。微妙なニュアンスだったり、今の発言は「yes」「no」どちらなのかとか。

日本人だったら体感的になんとなくわかるところが、わからないんですよね。どれだけ日本人だらけの環境で育ってきたのか、がその点を分けるところなのかもしれません。なんとなく気まずいな今…と気付けるとか、この雰囲気でこれはやらないほうがいいな…という配慮ができるとか(笑)

ーーほんとにやり方が日本ですね(笑)Yutaさんご自身は、外国人とのやりとりはどういうときに行う必要があるんですか?

システム運用していく上で、現地ベンダーや、シンガポールのデータセンターとのやりとりはありますね。技術的な内容の依頼などを、英語でやらないといけないです。加えて自分が担当している製品以外の領域についても助っ人を頼まれることもあります。実は社内には私にようなインフラエンジニアとして詳しい人間がいないので、こういうこともありますね。

海外出張、一人旅を通してマレーシアにのめり込み、「自分で選べる人間になりたい」

ーー技術力というスキルを持って、外国人と英語で仕事をし、日本人とは日本人として日本語で仕事をする。そんな姿が目に浮かびました。とはいえ、Yutaさんは29歳とまだ20代ですよね?どうして20代でマレーシア就職しようと考えたんですか?

遡れば、学生時代は海外にはまったく興味がなかった人間だったんです。高校も交換留学が盛んだったりして、大学も欧米に行く同級生がいましたが、私自身はそうではなかったんですね。そのまま新卒で東京のIT企業に入社しました。ひとつ繋がっているといえば、当時から英語には苦手意識はなかったんです。しかし、海外にひとり旅したことあるわけでもなく、海外とはほとんど無縁の人生でした。

それが大きく変わったのが新卒入社1年目の冬に経験した出張です。部署に配属されて半年も経たないある日、当時の上司から「ちょっと海外に出張に行ってきてもらえる?」との話があり、大変驚きました。後から聞いた話では、「あいつ、TOEIC試験の点数高いし、何とかなるだろう」というノリで白羽の矢が立ったらしいです(笑)出張先はオーストラリアを中心に3都市で、合計1ヶ月半程度の間、システム構築の仕事をしていました。

出張の仕事自体はとても大変だったんですが、発見もあったんです。それは「割と英語で仕事できるな」という実感、「現地の人達もそこまで真面目に仕事してないな(苦笑)」という発見、そして「海外で働いている現地採用の日本人がとても優秀だった」というものでした。

私はそれまで、現地に居を構えて仕事をする日本人がこの世に存在するなんてことは、知らなかったんですよ。しかもその方は現地の人にテキパキ指示を出してプロジェクトを進めていくなど、私の目にはとても優秀なビジネスパーソンとして映りました。

ーー海外で働いている人なんているんだ、しかも優秀じゃないか!という発見があったんですね。そこからなぜマレーシアに?

マレーシアとの出会いは、そのオーストラリア出張中に食べたカレーラクサでした。ここうまいよ、と連れていってもらった先がたまたまマレーシア料理のお店だったんですが、それはもうおいしかったんです。出張後もマレーシアに興味を持って何度か初めての一人旅をしたのですが、ますます「マレーシアなにこれ超おもしろい」と興味を持ってしまいました。

日本よりも日差しが強くて明るくて、街を歩いている人もみんな若い。割とみんな楽しそうですし、「なんなんだ、この活気は」と。

マレーシアはものすごく色々なものが混じっていて、近代都市的な景観も、アジア的なごちゃごちゃ感が同じ所に存在していました。それが単純におもしろいし、不思議と自分の肌に合っているなと当時感じていましたね。

ーーマレーシアに惚れてしまった。そんな出張、マレーシアひとり旅を経験した後に、マレーシア就職ですか。

いえ、その後数年間会社に留まっていままで通り働いていたんです。思えば、かなりハードに働いていました。しかし、あるとき働き過ぎて身体を壊してしまったんですよね。今後のことを考えると、その根本原因も業界がそもそもブラックであるということもあり、日本国内で転職したって同じことになりそうだな、と思いました。「だったら、このタイミングで海外転職の方が自分のためになるな」と考えついたんです。

会社や今までの仕事と距離を置いてよく考えてみたら、ITエンジニアは技術者で、いわゆる手に職を持っているんです。だったらその手に職を活かせれば、海外でも仕事があるんじゃないか、と。

ーー身体を壊してしまったことが、今までの自分を客観的に見る良い機会になったんですね。

海外転職を検討するにあたり考えたのは、「自分で選べるような人間になりたい」ということでした。海外に出て働けば、結果ものすごく選択肢が広がるわけじゃないですか。東南アジア、英語圏、世界…分母がどんどん大きくなるわけですよね。逆に新卒で入った会社でずっと盲目的に働いていたら、外の世界には広がってはいか ず、1 分の 1 のまま。会社にしがみつかないといけない人も多くいるはずです。

「人生における選択肢の分母は大きい」と気付き、海外に出たからこそ自身の市場価値を常に考える

ーー参考になるなと思ったのは、Yutaさんはたまたま新人時代に海外出張を命じられて、そこで海外で働くという世界を目の当たりにしたわけですよね。それがあったから、分母を大きくできた。

私だって、未だに日本で悶々と辛い思いして働いている未来はあったと思うんですよ。元々海外とは無縁の人生でしたし、海外ひとり旅だって経験したことがありませんでした。巡り合わせが重なっただけです。

ただ、きっかけとして英語に抵抗感がなかったというのはあるかもしれません。だからこそ、あの時期に海外出張のチャンスを戴いたのでしょうし。「あいつ、TOEICの点数高かったよな」と(笑)

日本でだって良い会社に入社しても、辛い目にあっても辞められずに命を絶たれる方もいらっしゃるじゃないですか。1/1の考え方で、ここしかない、と思い込んでしまうんですね。逃げ出すという選択肢を知らなくて、追い詰められてしまう。しかし、いまの私は「人生の分母」は大きいです。明日出社してクビになったら、いくらでも仕事探せる自信があり、怖くないんです。これは知っているか、知っていないかの違いだと思うんですよ。

ーー日本人として就労経験を積んでいけば、海外でも働き口はあるんだよ、ということですよね。

そうやって分母が開けて、ひとつのところにしがみつかなくてもよくなるのは素晴らしいことです。一方で、努力はしなければいけません。特にIT業界はどんどん新しい技術・知識、トレンドが表れるので、放っておくと自分が持っていたものも陳腐化していきます。海外就職したからといって上がりではなくて、「どういうスキルを伸ばしていけば、この先も生き残っていけるのか」を常に考えていますね。「人生の分母が大きい」ことは、同時により広い世界に晒されることでもあるからです。

私の場合でいえば、新卒からずっとセキュリティ関連領域での経験を積んできました。ちょうど、世界的トレンドとしても、セキュリティ領域に強い人材は不足しているんです。だったらこのまま直進するのが一番、と考えています。

まずは自分と向き合うことから始めること

ーーアジアに、広い世界に出て行くことは、人生の分母は広がるし、同時に不安にも晒されることになる、と。日本に居る人がもし海外で生きていきたい場合、なにから始めればいいですか?

ちゃんと自分を知ること、から始めるのがいいのではないでしょうか。本当は何に興味を持っていて、本当はなにをやりたくなくて、本当は自分はどうしたいのか、本当は自分はなにができるのか?例えば、IT業界で数年間経験を積んできましたという方がいらっしゃれば、果たしてなにがどれほどできるのか、本当にできることはなんなのか、を突き詰めて考えることです。

日本で生まれ育ち、新卒で日本の会社に入社するという「1/1の世界」で生きていると、自分のことをわかっているようでわかっていないことって、よくあります。だって、日本の会社で働いたら、会社から今年の目標を決めろと言われて、思ってもしない綺麗事の目標を書くことだってあるわけじゃないですか(笑)

ーー1/1の環境で他人に管理されている、他人ドリブンの間はじぶんを客観視しにくい。

私の場合は幸運にも入社1年目で、勤め先が絶対の存在ではないうちに、海外で働いている人を見ることができたんですよね。あるいは、「1/1の世界」を解除するために、他業種・他の会社の人の話を聞くことからはじめてもいいかもしれません。

ーーちなみに、なぜそこまで突き詰めて考えられるんですか?

自分が海外就職をしていること自体を正当化したい、正解にしなければならないという意識があるからではないでしょうか。海外で働いていると今回のように、「なぜ海外就職したんですか?」「海外就職どうですか?」という質問に晒されることが多いんです(笑)聞かれるということは、その答えを人に説明できなければいけない。私自身経験がありますが、海外に居を移すとなると今の会社をやめて東南アジアで生きる、なんてこ とを言えば、同僚や上司、友人や家族など周りの人達は色々なことを言ってきますからね。そんなときにちゃんと納得してもらえる考えを用意しておかないといけません。でも これは、自分自身に対しても同じことだと思います。

ーー自分も説得する必要がある、と。

海外就職・海外移住は別に日本ではマジョリティではありません。それゆえ、「本当に俺はこれでいいのか?」と自問自答する機会が多いです。そこで、「これでいいんだ」と確信が持てれば持てるほど、自信をもって自分の人生を歩んでいけます。それに、「俺の選択は間違ってなかったんだよ」と後々言いたいじゃないですか、やっぱり(笑)

裏を返せば、人間、あとでいくらでも論理を語ることはできます。後付けで自信を持たせることもできるんです。であれば、この話を読んで直感的にピンときたなら、海外就職を検討してもいいかもしれませんね。人間って結局は感情で動きますけど、それが一番大きな力を産みますから。

ーーありがとうございます。いま悶々と考えている人達にとっても、非常に勉強になる話を頂けたかと思います。Yutaさんも引き続きその調子で、マレーシアで頑張って下さい!応援しております。